●オオタカとその生態
当社では、各種の自然環境調査に携わっており、オオタカ調査についても多くの実績があります。
オオタカは、大きなタカというイメージを持たれている方も多いかと思いますが、実際にはカラスとほぼ同じ大きさのタカです。
そもそも、オオタカという種名の由来は、奈良時代には「あをたか(蒼鷹)」で、平安時代から「おほたか(大鷹)」とされており、本来は成鳥オスの灰色がかった青みのある体色を指してそう呼ばれるようになったとのことです。
(参考:「図説 日本鳥名由来辞典」(柏書房))
また、オオタカは奥深い山地に住むというイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれませんが、実際は平野部の市街地郊外に生息していることが多い種と言えます。そのため、道路等の開発事業の計画路線上もしくはその近隣に営巣地があるケースが多く、他の猛禽類よりも開発事業に関連する調査対象になることが多くなるようです。
●オオタカの観察
オオタカの基本的な調査は、現地で双眼鏡やカメラ等を用いて行う定点観察法と呼ばれる方法で、この方法は行動圏を把握するのに適しています。
その他、繁殖がうまく行われているかを確認する繁殖状況調査という方法があります。営巣地に一時的に立入って地上から巣内を観察する方法になりますが、親鳥に余計なストレスを与えてしまわないよう細心の注意を払いながら観察します。
さらに、工事中における巣内のモニタリング調査という方法があります。これは、少し特殊な調査になりますが、工事現場に近い箇所でオオタカの巣が見つかった場合に、工事がオオタカの繁殖に及ぼす影響を把握するために行うことが目的で、監視カメラを用いたモニタリングシステムを設置して行います。
●オオタカの巣に登る
モニタリングシステムを導入することになったら、繁殖活動が始まる前にカメラの設置作業を終わらせて、観察できる体制を整えます。
機材を設置する場合、営巣木もしくは隣接する木に直接登って、設置作業を行います。設置作業の際は、巣へダメージを与えないよう最大限の注意を払いながら実施します。
また、高所作業になるため、日頃からロープワークなどの訓練・教育を十分に行い、安全管理を行った上で実施しています。
監視カメラ設置後は、メンテナンスフリーで稼働し、調査終了まで連続で録画を行います。また、遠隔操作やライブ配信のため、インターネット等の環境を整えます。
なお、オオタカ等の営巣木に関する情報は、希少種保護の観点から非公開扱いとなります。当トピックスにおいても、営巣木の写真等に木の特徴や背景などが写り込んでいる可能性があるので残念ながらお見せできません。
●本格的な繁殖シーズンの到来と子育て
設置した監視カメラシステムを運用する段階では、オオタカが来てくれることを祈るような思いで毎日ライブ配信を確認します。
最初に巣に飛来するのは、大体オスで、毎年ほぼ同じ時期に飛来します。
オスは、主に小枝などの巣材運びから始め、ある程度の量を巣に運び込んでおおまかな形を整えます。
そのうち、メスが来るようになります。メスはオスによって作られた巣を細かくチェックして、枝の一本一本まで配置し直すような行動が観察できます。巣のつくり方が雑だと、基礎部分から手直しされることもあるようで、メスのチェックはなかなか厳しいようです。
オオタカの子育ては役割分担がはっきりしていて、抱卵はオスとメスが交代で行いますが、孵化後は主にメスがヒナの世話を担当し、オスはもっぱらエサさがしに外に出ていることが多いようです。
1シーズンの繁殖で、親鳥の巣への出入りは数千回におよび、巣作りや卵・雛の保護、餌の確保など、子育てには大変な労力が必要のようです。
そして、梅雨が明ける頃には、巣立った雛が巣の周りで飛び方や餌の獲り方を学ぶ巣外育雛期(すがいいくすうき)と呼ばれる時期になり、この時点でカメラを使ったモニタリングも終了することになります。
空になった巣は寂しい気もしますが、「今年も無事に巣立って良かった」という思いと、「機材トラブルがなくて良かった・・・」という調査責任者としての思いもあったりします。