道路交通騒音の調査について

投稿日: カテゴリー: 環境測定

当社では、騒音に関する業務を数多く実施していますが、その中で最も多いものが道路交通騒音の調査です。
道路交通騒音は、道路を走行する車両から発生する騒音です。道路交通騒音の調査は、住居等の保全対象が騒音に曝される状況を把握し、影響が著しい場合の低減対策を検討するための基礎資料とするために実施するもので、測定方法や分析・評価について簡単にご紹介します。

●道路交通騒音の測定方法について
道路交通騒音の測定は、道路を走行する車両から発生する騒音を把握するために行うため、基本的には道路の脇(道路端)に騒音計を設置して、通常24時間連続で行います。
騒音計の設置箇所については、既設道路の騒音状況を把握したい場合は道路端へ、道路からの騒音が原因とみられる苦情対策で調査を行う場合は騒音値を把握したい箇所(民家等)に設置します。

調査状況
調査状況
騒音計
騒音計

騒音計はマイクの部分を道路に向けて、地上1.2mの高さになるように三脚の上に設置するのが基本です。写真は、実際の測定状況の写真で、三脚に固定された騒音計のほかに、測定状況を知らせるためのカラーコーンや調査の内容などについて示したプレートも併せて設置してあります。一方、調査における留意点としては以下のような事項が挙げられます。

①調査前に使用機器の使用前点検を実施する。また、機器設置や人員配置等を確認する。
②調査作業開始前に、調査員全員が集まり調査全体の流れや段取り、緊急時の対応等を最終確認する。
③調査日は、工事やイベント等の特異的な日を除外して設定する。
④天候によっては、雨天時の濡れた路面を走行する車両の水切り音や強風時の発生音により、正しい値を測定することができないことがあるため、調査を延期して調査日を再設定する。
⑤予定している調査地点が民地の場合は、地権者の了解、調査地点が歩道上であれば、所管警察署の許可を得る。

これまでに多くの調査を実施してきましたが、近年は台風や大雨等の自然災害が多く、延期に次ぐ延期で調査を行えない事もありました。また、調査地点の選定に関しては、地権者に調査内容を理解してもらえず了解を得られなかったことや、季節によってセミやアオマツムシ等の鳴き声、さらには通勤・通学路等でマイク代わりに歌っていく通りすがりの人に悩まされることもありました。
また、調査は24時間連続で実施するため、機器の設置から撤去まで含めると30時間程度かかります。その間、調査員は交代で機器の動作確認や周辺状況の把握等で現場に滞在しますので、安全な待機場所の確保や暑さ・寒さ対策等安全管理及び健康管理に気を配る必要があります。

●道路交通騒音の分析・評価について
現地調査終了後、騒音計を回収し、測定値(=騒音レベル)が記録された騒音計のメモリーカードを確認します。メモリーカードには一定間隔の時間で騒音レベルの数値が記録されています。

道路交通騒音は、新幹線等の鉄道騒音や建設作業騒音等の他の騒音に比べ、自動車の通行により小刻みに変動する騒音レベルが長く継続する特徴があります。道路交通騒音の分析は、メモリーカードに記録された数値をもとに、1時間毎の平均的な騒音値を算出します。その際、記録データからサイレン、ブレーキ音、ヘリコプターの音、通りすがりの人の歌声等の異常音に該当する数値を取り除きます。

さらに、1時間毎に分析した騒音値を基に、昼間(6-22時)及び夜間(22- 6時)別に平均した騒音値を算出します。昼夜別に算出した騒音値は、基本的に以下に示した環境基準と比較して評価します。環境基準は、人の健康の保護に資する上で維持されることが望ましい基準であり、幹線道路に近接する箇所では以下の通りとなっています。

幹線道路に近接する箇所の環境基準例
基準値
昼間(6-22時) 夜間(22-6時)
70デシベル以下 65デシベル以下

 

評価の結果、基準値を超過する騒音値が確認された場合には、その超過要因に応じて、騒音レベルを低減する措置を事業者や道路管理者が検討します。

当社では、これまで道路交通騒音以外にも新幹線等の鉄道騒音や建設作業騒音等の調査を行ってきました。今後も、関係法令に基づいた適正な騒音測定及び環境対策・措置の検討を通じて、より良い環境の実現に貢献していきたいと考えています。

調査は大変な事も多いですが、実際にフィールドに出ると、綺麗な景色やその季節特有の雲の形などを目にする機会があり、無事に長時間の調査を終えたあとの達成感と相まって、普段では味わえない充実した気持ちになります。

熊本より雲仙岳を望む
熊本より雲仙岳を望む