トピックス

コンクリート構造物の非破壊調査

投稿日: カテゴリー: 維持管理調査

弊社では、コンクリート構造物の部材寸法や強度等を破壊しないで調査する「非破壊調査」を実施しています。

非破壊調査は、鉄筋の間隔、太さ、表面からの深さの調査や、コンクリート厚さ及び強度の測定を行います。
それらの数値を基にコンクリート構造物の現況強度を推定し、破壊に至る危険があると判定した構造物については、補修・補強方法を検討、提案します。

コンクリート構造物の非破壊調査の概要

○鉄筋の配筋間隔,表面からの深さの調査

・測定手法:電磁波レーダ法

測定器の概要 測定状況



・鉄筋間隔および表面からの深さ測定原理
測定器を移動させながら,測定器の電磁波を送信アンテナから発信した電磁波をコンクリートから内部に放射する。電磁波はコンクリートと電気的性質が異なる物質(鉄筋等)との境界面で反射され,再びコンクリート表面に出て受信アンテナで測定し、電磁波がどの位置で反射したかにより鉄筋間隔および深さを推定します。

○鉄筋太さの調査
・測定手法:電磁誘導法

測定器の概要(左:モニター部、右:スキャナー部) 測定状況



・鉄筋太さの測定原理
測定器は大きく分けてスキャナー部とモニター部より構成される。
スキャナー部はフィールドコイルおよびセンサーコイルから構成されており、センサーコイルの電圧は、鉄筋太さと表面からの深さによって変化する。
この電圧の変化を利用して、鉄筋太さを推定します。


○部材厚さの調査
・測定手法:衝撃弾性波法

測定器の概要 測定状況



・測定手順および測定原理
各測定点においてコンクリート表面から裏面までの弾性波の往復時間を測定し,各測定点でのコンクリートの厚さを推定します。
 
○コンクリートの強度の推定
・測定手法:リバウンドハンマー法

測定状況



・測定手順および測定原理
コンクリート表面を,ばねによって測定器先端の金属柱で打撃し,跳ね返り量(反発度)を測定することにより,コンクリートの強度を推定する方法です。

鳴く虫について ~鳴くバッタ類~

投稿日: カテゴリー: 昆虫昆虫類調査

秋の気配が日に日に強くなってきました。それに伴い、秋の夜長に鳴く虫の声も目立つようになってきました。今回は、この秋の夜長に鳴くイメージの強い、コオロギ類やスズムシ等、鳴くバッタ類についてとりあげてみたいと思います。

コオロギ類やスズムシ等の鳴くバッタ類は、詳しくは昆虫綱(こう)バッタ目(もく)という仲間に含まれ、コオロギ類はコオロギ科、キリギリス類はキリギリス科、スズムシはマツムシ科等に分類されます。バッタ類というと、近づくと飛び跳ねながらキチキチという音を出して逃げるというイメージがあるかと思います。しかし、バッタ類の中ではこういった飛び跳ねることが得意なバッタ類のほかに、鳴くことが得意なバッタ類がいて、先に書いたコオロギ科、キリギリス科、マツムシ科等の仲間が含まれます。基本的に鳴くのはオスのみで、これらは翅(はね)を巧みに使い、その種にしか出せない特有の音を出します。

バッタ類の中で跳ねることが得意な種類として代表的な種類はトノサマバッタやショウリョウバッタ等のバッタ科に属する種類で、これらは鳴きません。

トノサマバッタ(バッタ科)(横浜市)

トノサマバッタは都市河川周辺の乾燥した裸地にも普通に生息しています。

 

 

 

 

 

 

ショウリョウバッタ(バッタ科)(横浜市)

ショウリョウバッタは逃げる時にオスがキチキチと音を出しますが、求愛のためには鳴きません。

 

 

 

 

 

 
一方、鳴くことが得意なバッタ類として、コオロギ科やキリギリス科等の仲間が挙げられます。これらは早いものでは関東で4月から出現する種類があり、夏から秋にかけて多くの種類が入れ替わり出現します。

もちろん、例外として鳴かない種類もありますが、一般的には鳴く虫が鳴くのは求愛のためや、自分の位置を知らせるためと言われています。また、他個体や他種との競合のためにも鳴く意味があるようです。

ここから季節の推移の順に、調査業務のなかで確認される鳴くバッタの仲間を紹介していきます。

春の調査が始まる前の4月下旬から5月上旬、背丈の低いイネ科の草本から「ジーーー」という声が聞こえてきます。越冬していたクビキリギスやシブイロカヤキリが鳴き始め、春の訪れを感じさせます。

クビキリギス(キリギリス科)(横浜市)

クビキリギスは夜間に「ジーーー」という甲高い連続音で鳴きます。頭部の先が尖り、口が赤く、肢が長ければクビキリギスです。

 

 

 

 

 

 

シブイロカヤキリ(キリギリス科)(袖ヶ浦市)

シブイロカヤキリも夜間に「ジーーー」と鳴きますが、前種より低い連続音です。頭部の先が丸く、後ろ足が極端に短ければシブイロカヤキリです。

 

 

 

 

 

 
ゴールデンウイーク後は、初夏の兆しがみられる時期に、成虫になったヤブキリやケラが鳴き始めます。

ヤブキリ類(キリギリス科)(三浦半島)

ヤブキリは木の上で「ズリーーーー」と鳴きます。前脚のスネの内側にトゲがあり、このトゲで餌となる小昆虫を確実に抑え込み捕食します。キリギリス類等については、肉食か草食かはこのトゲの有無で判断できます。

 

 

 

 

 

 

ケラ(ケラ科)(三浦半島)

ケラは湿地、水田、畔等の地上で初夏から秋にかけて「ビーーー」という連続音で鳴きます。街中の集水桝やU字溝の中で鳴いている個体も散見されます。主に湿った地中で生活するため、土を掘るための前脚が強力であったり、水をはじいたりする機能を持っていたりします。

 

 

 

 

 
夏には縁日でよく売っているスズムシやヒガシキリギリスが登場します。また、夏も中盤に差し掛かったころから、いろいろな場所で鳴く虫の種類も増えていきます。

ヒガシキリギリス(キリギリス科)(相模川)

カヤキリは大河川の高水敷や海浜草本群落で夜間に「ジーーーーー」と単調な強い音で鳴きます。強大な顎を持っていて、同種でよく喧嘩をするため、数が多い場所では喧嘩傷を負った個体が多く見られます。カヤキリに指を噛まれると流血します。

 

 

 

 

 

カヤキリ(キリギリス科)(三浦半島)

カヤキリは大河川の高水敷や海浜草本群落で夜間に「ジーーーーー」と単調な強い音で鳴きます。強大な顎を持っていて、同種でよく喧嘩をするため、数が多い場所では喧嘩傷を負った個体が多く見られます。カヤキリに指を噛まれると流血します。

 

 

 

 

 

カンタン(マツムシ科)(袖ヶ浦市)

カンタンは林縁や草地等に生育するクズ群落に棲み、夕方から夜間にかけて「ルルルルルル・・・」という早いテンポの美声で鳴きます。自分の鳴き声を効率よく反響させるために、広い葉の虫食い部分等に頭胸部を突っ込み鳴く習性があります。

カンタンは環境省によると外来種とされていますが、日本直翅類学会によると外来種ではないということで、両者の意見が分かれています。

なお、学会が出版している図鑑には「著しい学名の混乱があった。」と記載されています。

 

 

エゾエンマコオロギ(コオロギ科)(鬼怒川)

エンマコオロギの仲間も晩夏から鳴き声を聞くようになってきます。エンマコオロギの仲間には住む場所が異なる数種類があり、顔の模様や体色などによって区別します。いずれも「コロコロリー・・・」に近い音で鳴きます。エンマコオロギは街中でも馴染みのある種類で、晩秋まで鳴いています。

 

 

 

 

 

クツワムシ(クツワムシ科)(横浜市)

クツワムシは夜間、林床の広い葉上で「ガチャガチャ・・・」とかなり大きな音で鳴いています。晩夏に鳴くバッタの仲間の代表格であるクツワムシも関東地方ではかなり減っている種類です。九州や八丈島にはタイワンクツワムシという別の種類がいて、クツワムシよりも鳴きかたが下手で、テンポ悪く「ガチャガチ・ガチャ」とかすれた音で鳴きます。

 

 

 

 

アオマツムシ(マツムシ科)(横浜市)

アオマツムシは樹上で「リーーーリーーー」と大きな声で鳴き、合唱性もあります。夏の早い時期には夜間に鳴き、晩秋になると昼間にも鳴きます。もともとは日本にいなかった外来種で、明治時代にサクラの苗木とともに卵の状態で中国から国内に移入したという経緯があるようです。

晩夏に樹上で鳴く虫が日本にはいなかったため、競合種がおらず爆発的に増えてしまいました。

 

 

 
そして、晩秋にさしかかってきますと、鳴く虫の種類も数も少なくなってきます。

マツムシ(マツムシ科)(八代市)

マツムシは草地の根元付近で「チン・チロリ」と鳴きます。また、1個体が鳴き始めると、多くの個体が鳴き始める合唱性もあります。

関東では生息地が減っていますが、先日、千葉県の調査に赴いた時に多くの鳴き声を聞くことができました。台風の影響もあったようですが、しっかりと耐えていたようです。

 

 

 

 

ウスモンウミコオロギ(ヒバリモドキ科)(三浦半島)

例外として鳴かないバッタ類もいます。

ウスモンウミコオロギは翅がないため、鳴くことはできません。夜行性で、名前のとおり潮汐の影響がある環境に好んで生息しています(別名ウスモンナギサスズ)。生息環境が限られているため、関東地方ではかなり稀な種と思います。

 

 

 

 

カネタタキ(カネタタキ科)(三浦半島)

カネタタキは夜間に「チン・チン・チン」と断続的に鳴きます。適応力のある種類で都心部の植栽や垣根にも生息しています。帰宅時、会社を出て駅まで歩く間にも鳴き声を聞くことができます。また、海岸付近では本種とよく似たイソカネタタキという別種がいて、こちらは「チリッ・チリッ・チリッ・」と鳴き、「リ」は小さく発音します。

 

 

 

 

 
バッタ類同士が生息環境や出現時期の違い等で棲み分けをしていたり、気温、時期、行動等により鳴き声が変わること等、バッタ類の生態的特性については興味深いことがたくさんあります。また、近年ではDNA解析などを取り入れた新しい手法による分類がなされてきたことや、研究の立ち遅れていた種群についても生態が解明されてきており、バッタ類から今後も学ぶことはたくさんありそうです。

バッタ類の鳴き声は気持ちを穏やかにしてくれます。エンマコオロギやカネタタキなど、身近に生息する種類も多くあります。季節感が薄れている生活のなかで、こういったバッタ類の鳴き声や存在を感じながら過ごすのもよいかと思います。

※文章中の科名や種名については、河川水辺の国勢調査 生物リストに準じて表記しています。

オオタカの巣を観察する

投稿日: カテゴリー: 自然環境調査

●オオタカとその生態

当社では、各種の自然環境調査に携わっており、オオタカ調査についても多くの実績があります。
オオタカは、大きなタカというイメージを持たれている方も多いかと思いますが、実際にはカラスとほぼ同じ大きさのタカです。

そもそも、オオタカという種名の由来は、奈良時代には「あをたか(蒼鷹)」で、平安時代から「おほたか(大鷹)」とされており、本来は成鳥オスの灰色がかった青みのある体色を指してそう呼ばれるようになったとのことです。
(参考:「図説 日本鳥名由来辞典」(柏書房))

また、オオタカは奥深い山地に住むというイメージを持たれている方もいらっしゃるかもしれませんが、実際は平野部の市街地郊外に生息していることが多い種と言えます。そのため、道路等の開発事業の計画路線上もしくはその近隣に営巣地があるケースが多く、他の猛禽類よりも開発事業に関連する調査対象になることが多くなるようです。

飛翔するオオタカ

●オオタカの観察

オオタカの基本的な調査は、現地で双眼鏡やカメラ等を用いて行う定点観察法と呼ばれる方法で、この方法は行動圏を把握するのに適しています。

その他、繁殖がうまく行われているかを確認する繁殖状況調査という方法があります。営巣地に一時的に立入って地上から巣内を観察する方法になりますが、親鳥に余計なストレスを与えてしまわないよう細心の注意を払いながら観察します。

さらに、工事中における巣内のモニタリング調査という方法があります。これは、少し特殊な調査になりますが、工事現場に近い箇所でオオタカの巣が見つかった場合に、工事がオオタカの繁殖に及ぼす影響を把握するために行うことが目的で、監視カメラを用いたモニタリングシステムを設置して行います。

●オオタカの巣に登る

モニタリングシステムを導入することになったら、繁殖活動が始まる前にカメラの設置作業を終わらせて、観察できる体制を整えます。
機材を設置する場合、営巣木もしくは隣接する木に直接登って、設置作業を行います。設置作業の際は、巣へダメージを与えないよう最大限の注意を払いながら実施します。

また、高所作業になるため、日頃からロープワークなどの訓練・教育を十分に行い、安全管理を行った上で実施しています。
監視カメラ設置後は、メンテナンスフリーで稼働し、調査終了まで連続で録画を行います。また、遠隔操作やライブ配信のため、インターネット等の環境を整えます。

なお、オオタカ等の営巣木に関する情報は、希少種保護の観点から非公開扱いとなります。当トピックスにおいても、営巣木の写真等に木の特徴や背景などが写り込んでいる可能性があるので残念ながらお見せできません。

●本格的な繁殖シーズンの到来と子育て

設置した監視カメラシステムを運用する段階では、オオタカが来てくれることを祈るような思いで毎日ライブ配信を確認します。

最初に巣に飛来するのは、大体オスで、毎年ほぼ同じ時期に飛来します。
オスは、主に小枝などの巣材運びから始め、ある程度の量を巣に運び込んでおおまかな形を整えます。
そのうち、メスが来るようになります。メスはオスによって作られた巣を細かくチェックして、枝の一本一本まで配置し直すような行動が観察できます。巣のつくり方が雑だと、基礎部分から手直しされることもあるようで、メスのチェックはなかなか厳しいようです。

オオタカの子育ては役割分担がはっきりしていて、抱卵はオスとメスが交代で行いますが、孵化後は主にメスがヒナの世話を担当し、オスはもっぱらエサさがしに外に出ていることが多いようです。
1シーズンの繁殖で、親鳥の巣への出入りは数千回におよび、巣作りや卵・雛の保護、餌の確保など、子育てには大変な労力が必要のようです。

巣立った直後のオオタカ幼鳥

そして、梅雨が明ける頃には、巣立った雛が巣の周りで飛び方や餌の獲り方を学ぶ巣外育雛期(すがいいくすうき)と呼ばれる時期になり、この時点でカメラを使ったモニタリングも終了することになります。
空になった巣は寂しい気もしますが、「今年も無事に巣立って良かった」という思いと、「機材トラブルがなくて良かった・・・」という調査責任者としての思いもあったりします。

道路付属物点検について

投稿日: カテゴリー: 維持管理調査

弊社では、標識・照明柱等の小規模道路付属物と呼ばれる構造物の点検を実施しています。

道路付属物点検は、施設の異常又は損傷を早期に発見し、標識板や灯具等の落下や支柱の倒壊等による第三者被害の恐れのある事故を防止し、安全で円滑な道路交通の確保のために必要な点検調査です。点検調査の結果、落下、転倒の危険性があると判定した構造物については、補修・補強方法を検討、提案します。

●小規模道路付属物の種類と点検個所
小規模道路付属物には、道路標識、照明設備等があります。
主な小規模道路付属物の種類及び点検個所は以下に示すとおりです。

道路付属物の種類と点検部位

●損傷度の判定基準
点検により損傷度を判定し、その状態によって以下のような対応を行います。

判定区分 一般的状況 判断の目安
損傷が認められない。 問題なし
損傷が認められる。 経過観察
損傷が大きい。 早急に措置が必要

 

●点検状況
目視点検において高所箇所の確認には以下に示す伸縮装置付カメラや高所作業車による点検を実施します。
目視による点検を実施し、損傷度が大きく明らかに危険な構造物は、補修又は撤去・新設の対応を取ります。目視では損傷度が明らかにならず、ハンマーによる打音検査等で内部の腐食が進んでいる懸念がある場合は測定機器を使用し詳細に調査を実施し、板厚等から内部の腐食状況を確認します。

1. 伸縮装置付カメラによる目視点検 2. 高所作業車による目視点検

 

●点検結果
弊社の点検例で、判定区分が損傷度Ⅲと判定された構造物を以下に示します。
2の例は倒壊の危険性があるため、撤去・新設となりました。

1. 標識横梁取付部の腐食(判定区分損傷度Ⅲ) 2. 路面境界部の腐食による孔食(判定区分損傷度Ⅲ)

道路交通騒音の調査について

投稿日: カテゴリー: 環境測定

当社では、騒音に関する業務を数多く実施していますが、その中で最も多いものが道路交通騒音の調査です。
道路交通騒音は、道路を走行する車両から発生する騒音です。道路交通騒音の調査は、住居等の保全対象が騒音に曝される状況を把握し、影響が著しい場合の低減対策を検討するための基礎資料とするために実施するもので、測定方法や分析・評価について簡単にご紹介します。

●道路交通騒音の測定方法について
道路交通騒音の測定は、道路を走行する車両から発生する騒音を把握するために行うため、基本的には道路の脇(道路端)に騒音計を設置して、通常24時間連続で行います。
騒音計の設置箇所については、既設道路の騒音状況を把握したい場合は道路端へ、道路からの騒音が原因とみられる苦情対策で調査を行う場合は騒音値を把握したい箇所(民家等)に設置します。

調査状況
調査状況
騒音計
騒音計

騒音計はマイクの部分を道路に向けて、地上1.2mの高さになるように三脚の上に設置するのが基本です。写真は、実際の測定状況の写真で、三脚に固定された騒音計のほかに、測定状況を知らせるためのカラーコーンや調査の内容などについて示したプレートも併せて設置してあります。一方、調査における留意点としては以下のような事項が挙げられます。

①調査前に使用機器の使用前点検を実施する。また、機器設置や人員配置等を確認する。
②調査作業開始前に、調査員全員が集まり調査全体の流れや段取り、緊急時の対応等を最終確認する。
③調査日は、工事やイベント等の特異的な日を除外して設定する。
④天候によっては、雨天時の濡れた路面を走行する車両の水切り音や強風時の発生音により、正しい値を測定することができないことがあるため、調査を延期して調査日を再設定する。
⑤予定している調査地点が民地の場合は、地権者の了解、調査地点が歩道上であれば、所管警察署の許可を得る。

これまでに多くの調査を実施してきましたが、近年は台風や大雨等の自然災害が多く、延期に次ぐ延期で調査を行えない事もありました。また、調査地点の選定に関しては、地権者に調査内容を理解してもらえず了解を得られなかったことや、季節によってセミやアオマツムシ等の鳴き声、さらには通勤・通学路等でマイク代わりに歌っていく通りすがりの人に悩まされることもありました。
また、調査は24時間連続で実施するため、機器の設置から撤去まで含めると30時間程度かかります。その間、調査員は交代で機器の動作確認や周辺状況の把握等で現場に滞在しますので、安全な待機場所の確保や暑さ・寒さ対策等安全管理及び健康管理に気を配る必要があります。

●道路交通騒音の分析・評価について
現地調査終了後、騒音計を回収し、測定値(=騒音レベル)が記録された騒音計のメモリーカードを確認します。メモリーカードには一定間隔の時間で騒音レベルの数値が記録されています。

道路交通騒音は、新幹線等の鉄道騒音や建設作業騒音等の他の騒音に比べ、自動車の通行により小刻みに変動する騒音レベルが長く継続する特徴があります。道路交通騒音の分析は、メモリーカードに記録された数値をもとに、1時間毎の平均的な騒音値を算出します。その際、記録データからサイレン、ブレーキ音、ヘリコプターの音、通りすがりの人の歌声等の異常音に該当する数値を取り除きます。

さらに、1時間毎に分析した騒音値を基に、昼間(6-22時)及び夜間(22- 6時)別に平均した騒音値を算出します。昼夜別に算出した騒音値は、基本的に以下に示した環境基準と比較して評価します。環境基準は、人の健康の保護に資する上で維持されることが望ましい基準であり、幹線道路に近接する箇所では以下の通りとなっています。

幹線道路に近接する箇所の環境基準例
基準値
昼間(6-22時) 夜間(22-6時)
70デシベル以下 65デシベル以下

 

評価の結果、基準値を超過する騒音値が確認された場合には、その超過要因に応じて、騒音レベルを低減する措置を事業者や道路管理者が検討します。

当社では、これまで道路交通騒音以外にも新幹線等の鉄道騒音や建設作業騒音等の調査を行ってきました。今後も、関係法令に基づいた適正な騒音測定及び環境対策・措置の検討を通じて、より良い環境の実現に貢献していきたいと考えています。

調査は大変な事も多いですが、実際にフィールドに出ると、綺麗な景色やその季節特有の雲の形などを目にする機会があり、無事に長時間の調査を終えたあとの達成感と相まって、普段では味わえない充実した気持ちになります。

熊本より雲仙岳を望む
熊本より雲仙岳を望む

防火水槽について

投稿日: カテゴリー: ライフライン維持管理調査

戦後から高度成長期に作られ、50年以上経過したインフラストラクチャーが老朽化し、補修、補強や作り変えが必要なものが増えています。当社では、その中で、皆さんにあまり馴染みがないものなのかもしれませんが、防火水槽の補修・補強に取り組んでいます。

防火水槽は、消防庁及び各自治体などが設置し、火災発生時の消火用の水供給源として利用されます。
主に、道路の地下に設置されている場合が多く、以下の写真のような道路上のマンホールが防火水槽の取水口になっています。

道路上に設置された防火水槽の取水口

防火水槽は古いものでは戦前からの物もあり、東京消防庁によれば、東京二十三区内には約3,000箇所あるそうです。
大きさも色々ですが大体40t~100tの消火用の水を貯水しています、地震の被害でライフラインが寸断され、水道水が供給されなくなった時などに威力を発揮します。

老朽化した防火水槽について、補修・補強を検討、設計していきますが、そのために、防火水槽内の状況を知る必要があり、以下の写真のように内部の水を抜いた後、調査員が中に立ち入り、寸法、内部損傷状況確認、非破壊検査(水槽の壁厚、鉄筋の径の間隔を調べる)などを行います。

防火水槽の水抜き作業
防火水槽の水抜き作業

水抜き後の防火水槽の内部の状況及び非破壊検査の作業状況は以下の写真のとおりです。

水抜き後の防火水槽内部の状況
非破壊検査の作業状況
非破壊検査の作業状況

調査終了後現況の防火水槽の図面を作成し、壁厚を厚くする、補強材を入れる等の補修・補強方法を検討します。
そして、東日本大震災クラス地震にも耐えうるかを検証するための構造計算を行った上、補修・補強方法を決定し、補修・補強工事につなげていきます。

塩害の影響はどこまで?

投稿日: カテゴリー: 環境

先月、日本に上陸した台風24号は関東各地にも大きな爪痕を残していきました。
この台風は風台風と呼ばれており、降水量は多くないものの風が極めて強く、
けが人が出たほか、建物を損傷し電車の運休や遅延なども引き起こしました。

京成電鉄では、台風で海上から飛ばされてきた塩水が架線に付着したため、
送電線の一部がショートし出火するトラブルが相次ぎ、全線で運休したことは
記憶に新しいことと思います。
影響を受けた方々においては、大変な一日だったかと思います。

野菜の出荷についても、冬期に主産地となる関東、東海地方の太平洋側で塩害などの被害が続出しており、
冬場に向けて値上がりする可能性もあるようです。

そして、被害を受けたのは我々だけでなく、身近な自然もそのようです。

先日、調査で頻繁に通っている東京近郊のとある場所を訪れましたが、通常ならまだ
緑色の残っている広葉樹林も、先日の台風により塩をかぶったようで、茶色く冬景色のようになっていました。
周囲のオギの褐色と相まって、冬枯れのようにも見えます。

塩害の様子
現地写真:通常は緑色が残るはずの樹林も茶色一色となった。

ネット上の話題によると、東京、千葉などでは海に近い低い場所で多くの被害がありましたが、
神奈川では丹沢などの高い山まで塩害にさらされたようで、今季の紅葉にも影響があるのではと心配になります。

さらに、クローズアップしてみていくと、これら植物を餌とする生物の出現にも影響が出ていそうです。
例えば、これから越冬を控えているコムラサキやゴマダラチョウなどの幼虫にとって、
この時期に餌がないということは十分な餌を摂って越冬できるサイズまで成長することができず、
大きなダメージを受けるものと考えられます。

なお、ミドリシジミ類等の卵で越冬する種類については、夏に卵が産み落とされてから来春までは卵のままなので、
来春まで餌を食べる必要がなく、影響は小さいと考えられます。

その結果、越冬できずに死滅してしまう幼虫が多いため、来年に出現する個体数が減少してしまうということが考えられます。
このような影響を受ける種類は他にも数多いものと思われます。
そして、これらを餌とする種類も餌不足となり、大袈裟ですがこのような些細なことが連鎖して生態系全体に影響が波及していくことも考えられます。


参考写真:左がオオムラサキ幼虫(トゲが4対)、右がゴマダラチョウ幼虫(トゲが3対)
     通常は写真のように、越冬までに2cm程度の大きさまで成長する。

当地では来年も各種生物のモニタリング調査が続きますので、種レベルでのモニタリングは当然のこととして、
生物相全体及び生態系を通してみていく必要があるかと思います。


現地写真:ヤナギにつくコムラサキ。来年は元気な姿が見られるのだろうか?

騒音について

投稿日: カテゴリー: 環境測定

今回は、もっとも身近な公害と言われている「騒音」を取り上げたいと思います。
身近に感じる音として、鳥や虫の鳴き声、風や雨音のような気象により生じる音、工場、建設工事、自動車、鉄道、航空機等から発生する人工的な音までと、いろいろあります。

音は人の価値観の違いや状況等によって感じ方が変わります。同じ音でも快く感じる人もいれば不快に感じる人もいますし、昼間と夜間では周囲の状況が変わるため感じ方が変わってきます。

騒音とは「好ましくない音」の総称で、無い方が良いとされる音です。生活騒音、工場騒音、建設騒音、道路交通騒音、鉄道騒音、航空機騒音、近接騒音等、その発生源に応じて分類がなされています。

騒音は、騒音レベルと呼ばれる物理量でその大きさを表します。
騒音レベル単位はdB(デシベル)で表され、その大きさの目安の一例として、下図に示すものがあります。

                  出典:「全国環境研協議会 騒音小委員会」

音の感じ方は価値観や状況によって変化するため、騒音が「感覚公害」と言われる所以です。
単に「うるさい」という理由で、対策・対処を行っていればきりがありませんが、一定の基準は必要です。

そこで、いくつかの法令に基づく規制基準が設定されておりますが、その一つとして、環境省が定める「環境基準」があります。
環境基準とは、「人の健康の保護及び生活環境の保全のうえで維持されることが望ましい基準」として定められています。

当社では、騒音の調査・分析・評価の業務を実施しており、一つの目安として環境基準との対比を行なっております。
次の機会に、当社の調査業務を通じ、調査・分析・評価方法を示したいと思います。

小型哺乳類の調査について

投稿日: カテゴリー: 哺乳類調査自然環境調査

先日、動物調査の一環として小型哺乳類調査を実施しました。
哺乳類の内、シカ、クマ等の大型哺乳類は足跡、糞等の痕跡によるフィールドサイン調査で確認します。
また、ネズミ、モグラ等の小型哺乳類は、痕跡での確認が困難なので罠(トラップ)による捕獲調査を同時に行います。

今回は、小型哺乳類確認のため使用した罠(トラップ)についてご紹介したいと思います。

調査などで使用される罠(トラップ)には様々なものがありますが、小型哺乳類の調査では補殺用のパンチュートラップ(はじき罠)や生け捕り用のシャーマントラップが主に使用されています。
今回の調査では、生息個体への悪影響(調査圧とも言います)を少なくするため、シャーマントラップを使用しました。

使用したシャーマントラップは、主にネズミ類を対象にした罠です。
この罠の中に餌を入れておき、ネズミ類を罠の内部に誘い込みます。
中に入ったネズミ類が踏板(ふみいた)を踏むとトリガーが外れ、ばねの力で入口が閉まり閉じ込められるという仕組みとなっています。

この餌として何を入れるかが、捕獲の成否に大きく関わってきますが、
今回は雑穀類(ペット用のハムスターフード)とカルパスなどを混ぜたものを使用しました。

※罠を使用した調査は都道府県などの許可が必要です。今回の調査では、自治体の捕獲許可を得て調査を行なっています。

シャーマントラップ
シャーマントラップ内部

今回の調査では40個の罠を一晩仕掛けておき、確認しました。
その中に入口が閉まっている罠を発見したので、中を覗くとアカネズミが入っていました。

アカネズミ(森林や河川敷に生息している日本固有のネズミ類)

その後、30分ほどで残りの罠を回収した所、先ほどのアカネズミ以外に5個の罠が作動していました。
その中に一個だけ重い罠があり、中を確認するとニホンイタチが入っていました。
このニホンイタチは、どうやら先に罠に入っていたネズミを食べようとして入口から無理矢理に中に入ったと推測されます。

ニホンイタチ

ニホンイタチはネコ目(食肉目)に属する動物で、川や沼などの水辺周辺や森林地帯に生息しています。
主にネズミや鳥、両生類、昆虫類などの陸上動物やカニ、ザリガニ、魚類といった水生動物を餌としています。
また、本自治体では準絶滅危惧種に指定されている日本固有の種です。

今回のトラップ調査では罠にかかったネズミを追ってイタチがシャーマントラップに入ることがあるという事もわかりとても勉強になりました。
しかし、捕獲できた種類がアカネズミとイタチの2種のみでした。
私はヒミズやジネズミは確認したことが無いので、次回は確認できるように工夫したいと思います。

アカネズミ

無電柱化

投稿日: カテゴリー: ライフライン設計
無電柱化された商店街の事例(自社撮影)

今回は、弊社が取り組んでいるインフラストラクチャーの設計や維持管理などの数ある業務の中で、
「電線共同溝」について取り上げます。

道路上の「無電柱化」の工事が各所で進められています。
「無電柱化」の工事は、電柱に架設されている電力や通信のケーブルを地中の「電線共同溝」に格納後、電柱を取り除く手法が一般的です。道路から電柱が無くなることで、「道路景観向上」、「震災時の電柱倒壊による被害拡大の防止」、「歩行者の安全、円滑な交通確保」等のメリットがあり、弊社でもいくつかの設計事例があります。

「電線共同溝」の設計段階における主な注意点は、以下のとおりです。

・既に埋設されている都市ガス、水道、下水道等のライフラインと電線共同溝の埋設位置の調整
・歩道上に設置する変圧器等の機能を持つ地上機器の位置の調整

設計段階では、既存のライフラインの埋設位置について、台帳等の資料を入念に調査するとともに、弾性波探査や試掘等を行い、既存埋設物の位置を直接把握して、工事中の手戻りを極力無くすように努めています。地上機器については、自動車走行の支障になることがあるため、地域の住民の意見を聞きながら設置位置を決めていきます。
また、地上機器については、照明柱の上部に設置する柱体方式を採用する場合もあります。

無電柱化工事前後
       【整備前】                      【整備後】
出典:東京都建設局のサイトより

写真は、東京都建設局HPより抜粋した川崎街道の日野市高幡付近での電線共同溝整備前、整備後の状況を示しています。
2020年の東京オリンピックに向け、東京都内でも無電柱化工事が進められています。
より良い街づくりに少しでも貢献できるようにさらに努力していきます。